人生にツキがある

浪人して通い始めた予備校には、チューターという方がいた。

いわゆる担任、のようなものだ。

高校までの担任と違うのは授業を担当しないこと。

我々のクラスのチューターはアオキさん。 当時「おじさん」と思っていたが、今の自分より全然若い。

最初の面談が入校後しばらくしてあった。

休みの日はどこで勉強してますか?との問いに 「それが、入った寮の近くに区立図書館があったので、そこで勉強してます」と答えたら、アオキさんは「そうですか、それはいいですね。人生にツキがありますね」と言ったのだ、とてもさりげなく。

受けた学校、すべてに落ちて、するつもりもなかった浪人生活を始めて、自信を失っていた私にその言葉は響いた。

そうか、私ってツキがあるんだ。

人生にツキがある、なんて思ったこともなかった自分が、ツイてる人間だと思うようになったのは、あのとき以来だと思う。

あんな風にさりげなく、人に自信を回復させられる言葉をかけられるようになりたいものだと、相談を生業としている今、しみじみ思う。